彼と仲良くはなかった。
ただ、住む場所が近いとか、クラスが同じだったとか
そんなレベル。
だけど、話したり、喧嘩したり、したことはよくあった。
クラスの誰もしらなかった「底引き網」。
彼だけが手を挙げて答えてた。
誰も知らないけど、彼だけが知っているっていうことが
他にもあった気がするの。
本の虫で、他のことにはまったく無頓着で、
変わり者で感情の起伏が多い彼。
しっかりと覚えている。
なのに、もういないなんて、どういうことだかわからない。
会わなくなって何年も経ってるから、
いきなり、亡くなったといわれても、
よくわからない。実感がわかない。
彼が命を絶ってから、私は普通に笑ってたし、普通に生きていた。
彼が死んだことなんて夢にも思わずにだ。
知らされた後も、涙がでたわけじゃない。
ニュースを聞くかのような自分の反応にもびっくりした。
自分のことは棚において、周りは何をしてたんだとか、
病気がちだっただろうか、とか、色々と考えてはみるけれど、
遠い出来事のように感じ取る自分は変わらない。
そして、ふと思う。
彼の死を知らない同級生はいっぱいいるだろうなと。
彼らは彼が死んだことなんて、夢にも思わずに生きていくんだ。
そして、彼の存在なんて何年か経ったら忘れちゃうのかもしれない。
仲良くはなかったけれど、
悩み苦しみ、結果として死を選んだ彼の存在が消えていくのは、やるせない。
だからといって、私の同級生に伝えて何が変わるのだろう。
あたしは何を求めているのだろう。
言われた方だって反応に困るだろう。
結局、あたしは話をしてはいないんだけど、
黙っていることは彼の存在をなかったことに、私も加担しているようで、
罪悪感のような重たさもあるんだ。
どうすることがいいのかは分からなくて、いつも口火を切るのを辞めるのだけれど、正しいのかは分からない。
月並みだけど、今はただ、冥福を祈るばかりです。
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